
「入院や手術で医療費が高額になったら、いったいいくら払うの?」
不安があると、医療保険を念のために検討したくなりますよね。
ただし日本には、高額な医療費に上限を設ける高額療養費制度があります。
結論から言うと現役世代でもっとも多い所得帯では、医療費が100万円かかっても自己負担は約9万円前後です。
この記事では「制度の要点」と「自己負担はいくらまでか」を最短で理解できるように整理しました。
※本記事は、会社員など公的医療保険に加入する現役世代を対象に、医療費の自己負担額を制度ベースで整理しています。
高額療養費制度とは

高額療養費制度というのは、公的医療保険で1ヶ月あたりの自己負担額に上限を設ける制度です。
ポイントは3つ押さえておけば十分です。
- 月単位(1日〜月末)で計算される
- 上限額は年齢・所得で変わる
- 原則は後から払い戻し(後述の方法を使えば窓口負担を抑えられる)
ただし、高額療養費制度の対象は「保険診療」に限られます。差額ベッド代や食事代といった対象外の費用もあるので、そのあたりは後半で触れていきましょう。
高額療養費制度の自己負担限度額はいくら?

自己負担の上限は「標準報酬月額(ざっくり年収帯のイメージ)」で区分されます。多くの現役世代に当てはまる年収帯を中心に、自己負担額の目安が分かるように説明します。
年収370万〜770万円の場合の自己負担上限額
制度上は上限が決まっていても、仕組みを知らないと実際の自己負担額を正しくイメージしにくいのが実情です。
この年収帯は現役世代で該当者が多く、制度の説明でもっとも参照される区分です。自己負担限度額は次の計算式で決まります。
80,100円+(医療費−267,000円)×1%
たとえば医療費が100万円かかった場合を当てはめると、
- 80,100円+(1,000,000円−267,000円)×0.01
- 80,100円+7,330円=87,430円
つまり、医療費が100万円でも自己負担は約87,000円(約9万円)です。
「100万円」という数字のインパクトに引っ張られがちですが、制度を前提にすると自己負担のイメージは大きく変わります。
年収で自己負担限度額はどう変わる?
年収が低い区分ほど上限は下がり、年収が高い区分ほど上限は上がります。
| 年収帯(目安) | 制度上の区分 | 上限のイメージ |
|---|---|---|
| 低め | 区分エ・オ | 数万円 |
| 中間(370〜770万) | 区分ウ | 約9万円 |
| 高め | 区分ア・イ | 10万円超 |
※ 上記は厚生労働省の高額療養費制度の「所得区分(区分ア〜オ)」を、イメージしやすく簡略化した目安です。
ただし重要なのは、どの区分でも自己負担額には上限があるという点です。
ここでのコツは、「自分の年収帯だと上限はいくらくらいか」を厳密に覚えるより、まず「医療費には必ず天井がある」という構造を理解することです。
- 医療費は上限がある
- その上限は月単位で決まる
この2点を覚えてください。
医療保険の要否を考えるとき、この前提があるかどうかで判断がブレなくなります。
高額療養費制度で「高い」と感じやすい理由

「上限が約9万円なら安心」と思う一方で「それでも高い」と感じる人がいるのも事実です。ここは誤解が起きやすいポイントなので、理由を整理します。
- 一時的な立て替えを想像:
退院時にまとまった支払いが発生するイメージが強い - 「月ごとの上限」という仕組みを知らない:
入院が長いほど無限に増えると誤解しやすい - 医療費以外の出費が印象に残る:
食事代・差額ベッド代などが「高かった記憶」として残りやすい
特に「一時的な立て替えが不安」という点は、事前の手続きでほぼ解消できます。
窓口での自己負担を抑える方法

高額療養費制度は原則「後で戻る」仕組みですが、事前手続きにより窓口負担を最初から上限額まで抑えられます。
ここは知っているだけで安心感が大きく変わるポイントです。
限度額適用認定証を使う方法
「限度額適用認定証(マイナ保険証等)」を使うと、窓口での支払いを自己負担限度額まで抑えられます。
メリット
- 高額な支払いを一時的に立て替えないで済む
- 家計への影響が見通しやすい
- 入院・手術が決まっている場合、精神的負担がかなり減る
入院や手術が決まったタイミングで「窓口負担がいくらになるか」を把握するためにも、早めに確認しておくと安心です。
多数回該当で自己負担はさらに軽くなる
同じ人が直近12か月で3回以上高額療養費制度の対象になった場合、4回目以降は上限額がさらに下がる「多数回該当」が適用されます。
年収370万〜770万円の区分では、4回目以降の上限は約44,000円に下がることになります(長期・継続治療向け)。
高額療養費制度の費用(対象外)

高額療養費制度は強力ですが、すべての費用が対象になるわけではありません。代表的な対象外は次のとおりです。
- 差額ベッド代(個室等の追加料金)
- 入院中の食事代
- 先進医療の技術料
- 通院の交通費や日用品などの雑費
高額療養費制度ではカバーできない費用があるため、不安が残りやすいポイントでもあります。
制度が「使えない」のではなく、「守る範囲が決まっている」と理解すると整理しやすくなります。
一方で、対象外まで保険で備えると、保険料が高くなりやすい点には注意が必要です。
高額療養費制度だけでは足りないケース

高額療養費制度は「医療費」には強力ですが、生活全体の負担までを完全にカバーする制度ではありません。
医療費の上限は見える一方で、現実には次のようなケースで家計の負担感が増します。
- 長期入院で食事代・交通費・雑費が積み上がる
- 個室希望で差額ベッド代がかかる
- 治療で働けず収入が減る
特に影響が大きいのは、治療による収入減です。高額療養費制度は医療費には対応しますが、収入減(生活費)までは補えません。
そのため、医療保険を考える際は、傷病手当金などの別制度とあわせて整理することが重要です。
医療保険を考える前に高額療養費制度を理解しよう(まとめ)

本記事は「医療保険が必要かどうか」を判断するための前提知識として、高額療養費制度を整理したものです。
医療保険を検討するとき、「医療費が怖いから」という理由だけで考えていると、必要以上の保障を積んでしまいます。
その前に、高額療養費制度で何が守られているのかを押さえておきましょう。
- 医療費の自己負担には上限がある
- 上限は月単位で決まる
この2つを理解しておけば、「自分の家計で上限額に耐えられるか」「対象外費用や収入減をどう考えるか」といった判断もスッキリしてきます。
「制度でどこまで守られているか」を知ることが、保険を考える第一歩です。
ここまでを踏まえると、重要なのは「医療費」よりも「家計全体への影響」をどう考えるかです。この視点を持つことで、医療保険を「何となく」で選ばずに済みます。
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