「給与所得控除ってわからない」
「給与所得控除は他の控除と何が違うの?」
「自分の収入ではいくら控除になるの?」
こんな悩みをもっていませんか。
給料明細や源泉徴収票を見ても何が書いてあるのかわからない。よくわからないから放置するということをしていませんか。
私も最初は何が書いてあるのか理解できず、放置していました。実は書いてあることがわかれば税金を安くできます。
たとえば医療費控除、ふるさと納税、iDeCo(イデコ)、NISA(ニーサ)などは自分で申告する控除の1つです。
控除がわからないと言う理由だけで手続きをしないのはもったないです。知らないと損をします。
この記事では
- 給与所得控除の基礎
- 給与所得控除と他の控除の違い
- 給与控除の具体的な計算
税金の控除がわかると税金を安くする方法がわかります。ぜひ最後まで見てください。
給与所得控除の基礎
給与所得控除の金額だけを知りたい場合は、源泉徴収票の上の図のみで答えが出ます。今回は順番に給与所得控除を説明していきますね。
給与所得控除は給与から税金を少なくするために差し引くものを指します。
自営業やフリーランスには必要経費と呼ばれるものがあります。
給与所得者という会社から給与をもらっている人には必要経費がないので、代わりに給与所得控除があると考えれば理解しやすいと思います。
必要経費の例
- 仕事で使う机
- パソコンの購入費
- 取引先に向かう交通費
- 絶対に使用した飲食代
- 取引先へのお土産
- 事業で使う本など
があります。
フリーランスや自営業には必要経費が認められているのに会社員に必要経費がないのは不平等ですよね。
不平等をなくすために会社員には必要経費の代わりに給与所得控除があります。1年間の給与に応じて計算式が変化し、給与所得を安くするようにしています。
給与と給料って何が違うのと私も思っていた時期があります。混同しやすい言葉なので、覚えましょう。
給与とは支払われる給料の全て。時間外、ボーナスなど手当も全て含みます。
給料とは基本給を指します。給与から時間外等を引いた正規の勤務時間の報酬です。
給与所得と給与収入の違い
よく間違われやすい2つの言葉ですが、使い分けは大切になります。日常で使う給料という言葉は給与収入に近い言葉です。
給与所得
給与収入
会社から自分の手元に入ってくるお金のことをいいます。金銭だけでなく、現物給与と呼ばれる低価格で受け取った会社の商品なども含まれます。
給与によって控除が変化
給与所得控除と所得控除は同じ控除の仲間ですが、控除されるタイミングが異なります。
給与所得控除
給与によって給与所得控除の計算が異なります。給与が増えても最大の控除額は195万円となります。
たとえば給与300万円の場合は表3番に該当し、300万円×30%+8万円=98万円。よって給与所得は98万円です。
給与別の計算方法は「給与所得控除の具体的な計算」の章で記載しています。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 | |
1 | ~162万5000 | 55万 |
2 | 162万円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万 |
3 | 180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万 |
4 | 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万 |
5 | 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万 |
6 | 850万円超 | 195万円(上限) |
所得控除
所得控除は納税者の個人的な事情を考慮するために設けられた制度です。お金を多く稼ぐと税金が稼いだ分にかかるので、所得控除を使って税金を軽くします。
所得控除は15種類あります。医療費控除や生命保険料控除など、それぞれ差し引ける金額は異なります。
所得控除(15種類)
基礎控除 | 社会保険料控除 |
配偶者控除 | 医療費控除 |
配偶者特別控除 | 生命保険料控除 |
扶養控除 | 地震保険料控除 |
障がい者控除 | 寄付金控除 |
寡婦控除 | 雑損控除 |
ひとり親控除 | 勤労学生控除 |
小規模企業共済等掛金 |
15種類の控除は複数に該当した場合も控除できます。よって控除が出来る分は利用したほうがお得です。
会社員は年末調整で会社が提出してくれているので、所得控除の申告は不要です。
医療費控除、寄付金控除、雑損控除は確定申告が必要となります。
給与所得控除の具体的な計算
計算方法は給与収入から下記の給与所得控除の表に該当する式をもとに計算します。計算で算出されたものが給与所得です。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 | |
1 | ~162万5000 | 55万 |
2 | 162万円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万 |
3 | 180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万 |
4 | 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万 |
5 | 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万 |
6 | 850万円超 | 195万円(上限) |
日本人の平均年収458万円で計算
平均給与458万円 (令和4年)
給与収入で計算式が異なる(表から抜粋)
360万円超660万円以下 :収入金額×20%+44万
458万円×20%+44万円=135万6000円(給与所得控除)
458万円-135万6000円=322万4000円(給与所得)
給与収入100万円
~162万5000:55万円
100万円-55万円(給与所得控除)=45万円(給与所得)
給与収入200万円
180万円超 360万円以下:収入金額×30%+8万円
200万円×30%+8万円=68万円 (給与所得控除)
200万円-68万円=132万円(給与所得)
給与収入700万円
660万円超 850万円以下:収入金額×10%+110万円
700万円×10%+110万円=180万円(給与所得控除)
700万円-180万円=520万円(給与所得)
給与収入1000万円
850万円超:195万円(上限)
1000万円-195万円(給与所得控除)=805万円(給与所得)
以上が給与所得控除の具体的な計算ですが、給与所得はわかったけど何のための計算なのか疑問が残ると思います。
給与所得控除の計算の意味を知る
全ての控除は所得税と住民税を算出するためにあります。解説していきます。
所得税
給与所得−所得控除(15種類)=課税所得
課税所得×税率(5%から45%)=所得税(仮)
所得税(仮)-税額控除=所得税+所得税×2.1%
所得税に復興特別所得税として2.1%を掛けた額を加えることになります。復興特別所得税は令和19年まで継続される予定です。
住民税
課税所得×10%+5000円(※)=住民税
住民税÷12ヶ月=月額の住民税が算出されます。
※防災対策の臨時増税として2023年まで5000円。2024年からは4000円となります。
最終的に何のための計算なのかがわかると理解しやすいですよね。
所得控除と税額控除
所得控除と税額控除の違いは控除のタイミングです。よって効果が大きく違います。
所得控除は下の図でわかるように、給与所得から差し引いて課税所得が計算されます。課税所得の金額により税率が変化し、単純に100万を引いても金額に影響しないことがあります。
税額控除は最終の金額が決定する場所で差し引きます。100万円を引くと効果は大きく違います。
所得控除と税額控除は税金を安くするための手段として同様です。控除を上手に使い税金を安くしましょう。
所得控除
所得控除は給与所得を小さくし、課税所得の金額を小さくします。課税所得に応じて税率を掛けて、仮の所得税が計算されます。
課税所得を小さくすることが税率を下げるポイントです。
税額控除
課税所得に税率が掛けられ仮の所得税が計算されます。税額控除は「所得税がこの金額で確定しますよ」という段階で控除するものです。
最終的に税務署に提出される直前で「控除があるので差し引きます」というイメージです。税額控除は原則として自分で提出となります。
税額控除の主なもの
1 | 配当控除 |
2 | 分配時調整外国税相当額控除 |
3 | 外国税額控除 |
4 | 政党等寄附金特別控除 |
5 | 認定NPO法人等寄附金特別控除 |
6 | 公益社団法人等寄附金特別控除 |
7 | (特定増改築等)住宅借入金等特別控除 |
8 | 住宅耐震改修特別控除 |
9 | 住宅特定改修特別税額控除 |
10 | 認定住宅等新築等特別税額控除 |
まとめ
いつも給料明細や源泉徴収票を見ても何が書いてあるのかわからないと思っていたけど、この記事を読んだことでもう放置することはないですね。
給与所得控除は給与収入によって変化する。給与収入が高くなれば、給与所得控除も高くなる。控除が無ければ税金を安くできません。
給与所得控除の計算は最終的に何のためにしているのか。答えは住民税と所得税の計算のためでしたね。
最初にも言いましたが控除がわからないと言う理由だけで手続きをしないのはもったいない。知らないと損をします。
損をしないために一度控除の手続きについて考えてみてください。