
「医療保険っていくらのプランがいいの?」
「みんな入っているから、なんとなく加入しているけど」
このように「金額」や「安心感」だけで保険を選んでいませんか?
医療保険は「入っているかどうか」ではなく、「入らなくても困らないかどうか」で分かれます。
- 入っていなくて困らない人
- 入っていないと家計が崩れる人
問題は「自分がどちら側なのか」を考えないまま、毎月の保険料を払い続けている人が多いことです。
この記事は「自分は医療保険が不要な側なのか?」YES/NOで答えを出すための判断専用の記事です。
数多くの家計相談を受けてきたFPの視点から、あなたにとっての『正解』を判定します。

医療保険が「不要になりやすい人」の特徴

医療保険がいらない人には、ある共通点があります。それは「何かあっても、慌てなくて済む土台」をすでに持っている点です。
医療保険が不要な人は、十分な貯蓄や充実した勤務先の福利厚生などリスクに耐えられる土台が整っています。
十分な貯蓄がある人
医療保険を卒業していい筆頭は、すでに一定以上の貯蓄を築けている人です。
理由はシンプルで、民間保険の正体は「起きる確率は低いが、起きたら家計が破綻する損害」に備える仕組みだからです。
医療費の支払いというリスクに対して、自分の手元の現金で対応できるなら、保険会社に利益を上乗せして支払う必要はありません。
例えば、手元に300万円の自由な現金があるとしましょう。入院して自己負担が15万円かかったとしても、生活が破綻することはありません。
一方で、月3,000円の保険料を30年払い続けると総額は108万円に達します。
15万円の支払いのために108万円を積み立てるのは、効率の悪い選択と言わざるを得ません。
結果として貯蓄こそが「がん」にも「怪我」にも「失業」にも使える、最強かつ汎用性の高い保険なのです。
会社員で公的保障が手厚い人
「高額な医療費がかかったらどうしよう」という不安の多くは、公的医療保険の仕組みを知るだけで解消されます。
特に会社員や公務員の方は、医療費と収入減の両方に備える制度がすでに整っています。
日本には「高額療養費制度」があり一般的な年収(約370万〜770万円)の人であれば、1ヶ月の医療費の自己負担額はおおむね9万円前後が上限です。
さらに病気やケガで長期間働けなくなった場合でも、「傷病手当金」として給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されます。
具体的なシミュレーションをしてみましょう。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 医療費総額 | 100万円 |
| 高額療養費の自己負担 | 約9万円 |
| 傷病手当金(1ヶ月) | 約20万円 |
| 実質の家計影響 | むしろプラスに近い |
月収30万円の会社員が1ヶ月入院し、総医療費が100万円かかったとします。この場合、医療費の自己負担は約9万円です。
一方で、健康保険からは傷病手当金として、約20万円が支給されます。
入院中の食費やパジャマ代を差し引いても、生活が立ち行かなくなるどころか、家計へのダメージは最小限に抑えられます。
会社員という立場そのものが、すでに強力な保障を備えている状態だといえます。

すでに使える公的制度を理解しないまま、民間の医療保険を上乗せする必要はありません。
短期入院が中心と考えられる人
「念のため、入院日額1万円の保険に入っておこう」そう考える人は決して少なくありません。
今の医療現場の実情を見てみると、この考え方が必ずしも最適とは言い切れない場面もあります。
近年の医療は技術の進歩や制度の影響もあり、できるだけ早く退院しその後は通院で治療を続ける形が主流です。
厚生労働省の調査では全国の平均在院日数は年々短くなっており、令和6年中の平均は25.6日とされています。
この数字には、長期療養が必要なケースも含まれています。現役世代に限って見ると、症状や治療内容によっては数日で退院するケースも珍しくありません。
たとえば5日間の入院だった場合、日額1万円の給付金は合計で5万円です。一方、30歳から60歳まで毎月5,000円の保険料を払い続けると、支払総額は約180万円になります。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 入院日数 | 5日 |
| 給付金(日額1万円) | 5万円 |
| 月5,000円×30年 | 約180万円 |
| 差額 | 支払う保険料の方が大きい |
この数字を見ると、短期入院を前提にした医療保険は必ずしも費用対効果が高いとは言えないことが分かります。
短期入院が何度かあった程度では、受け取れる給付金で保険料の元を取るのは、正直なところ簡単ではありません。
短期間の入院リスクについては、医療保険だけに頼らず、一定の生活費を手元に残して備えるという選択肢も現実的です。
医療保険が「必要になりやすい人」の特徴

反対に、医療保険が強力な味方になる人もいます。それは「今、何かあったら家計が壊れる」という瀬戸際にいる人たちです。
貯蓄がまだ十分でない人
貯蓄が100万円に満たない若い世代や子育てで家計に余裕がない家庭にとって、医療保険は「安心を買うための必要経費」になります。
高額療養費制度で、医療費の上限が決まっていても安心はできません。
数万円から10万円の支払いがすぐに必要になり、家賃や光熱費が払えなくなる状況では困るからです。
保険は貯蓄が貯まるまでの「つなぎ」として機能させるべきです。
例えば、貯金が30万円しかない状態で急に盲腸で入院し、10万円が飛んでいったとします。残りの20万円で家族の生活を支えるのは、精神的にかなりキツいはずです。
ここで給付金が10万円振り込まれるなら、生活の再建スピードは劇的に上がります。
「貯金が貯まるまでは保険で守る、貯まったら捨てる」。これが最も効率的な保険との付き合い方です。
自営業・フリーランスの人
フリーランスや個人事業主にとって病気は単なる「体調不良」ではなく、ダイレクトに「売上の消滅」を意味します。ここが会社員との決定的な差です。
自営業者が加入する国民健康保険には、会社員のような「傷病手当金」が原則として存在しません。
入院した瞬間に収入がゼロになり、なおかつ医療費と、事務所の家賃や社会保険料などの固定費の支払いが襲ってきます。このダブルパンチを耐え抜くには、民間保険の力が必要です。
月収40万円のフリーランスが1ヶ月入院したら、損害額は医療費10万円+失った売上40万円=計50万円にのぼります。
この50万円を埋め合わせる手段がないのであれば、保険に入っておくことは合理的なリスクヘッジといえます。

自由と引き換えに失った保障を、自分の手で買い戻す作業がフリーランスには不可欠なのです。
長期療養・入院リスクが高い人
数日の入院であれば「貯金で対応できる」と考える人も多いでしょう。しかし、数ヶ月に及ぶ長期の療養や、再発を繰り返す病気となると事情は変わります。
がんや脳血管疾患など治療が長期化しやすい病気の場合、高額療養費制度の「月ごとの自己負担上限」が何度も発生するからです。
月9万円の自己負担でも、半年続けば50万円を超えます。さらに通院費や差額ベッド代(平均1日6,620円)、家事代行費などが重なると貯蓄は想像以上のペースで減っていきます。
数百万円単位の技術料がかかる「先進医療」を選択したい場合、その費用を現金で即座に用意できる人はごく一部に限られます。
こうした状況で「いつまで治療が続くかわからない不安」を抱えながら、毎月の支出に耐え続けるのは簡単ではありません。
定期的な給付金があることで気持ちが楽になるタイプであれば、医療保険を持っておく価値は十分にあります。
ここまで読んで「たぶん自分はいらない側かもしれない」「いや、うちは必要かもしれない」と感じ始めている人も多いはずです。
もしこの時点で「そもそも、なぜ医療保険はいらないと言われるのか?」という理由をもう一度整理しておきたい方は、先にこちらをご覧ください。
ここからは、その感覚を「5つの視点」で整理し判断に変えるパートに入ります。

医療保険が必要かどうかを判断する5つの基準

以下の判断は、公的医療制度を前提に考えることが重要です。特に、医療費の自己負担額を左右する「高額療養費制度」の理解が欠かせません。
制度の仕組みをまだ確認していない場合は、先にこちらをご覧ください。
では、自分はどう考えるべきでしょうか。迷ったときは、次の5つの質問に答えてみてください。
1. 医療費の自己負担はいくらになるか
まず自分の「月額上限」を正確に把握しましょう。年収によって決まる上限額を知れば、どれだけの現金を用意しておけばいいか、が明確になります。
多くの現役世代は、1ヶ月10万円あれば足ります。
具体的には、年収約370万〜770万円(区分ウ)の方であれば、以下の計算式で上限が決定。
80,100円+(−267,000)×1%
具体例:100万円の治療を受けた場合
ユーザーが「100万円の治療でも約9万円」と納得できる数字の裏付けは以下のようになります。
- 計算式に当てはめる:
80,100円 + (1,000,000円 - 267,000円)×0.01 - カッコ内を計算:
80,100円 + (733,000円×0.01) - 合算する:
80,100円 + 7,330円 = 87,430円
数字で見ると「思っていたより全然かからない」と感じる人が多いはずです。この数式を見て「100万円の治療でも実質9万円くらいか」と思えるなら、保険の優先順位は下がります。
まずは感情ではなく、算数としてリスクを見極めるべきです。
※ここからは「医療費」ではなく「収入」に関する視点です。
医療費そのものより、実は多くの人が見落としがちなのが「働けなくなった期間の収入がどうなるか」という点です。
特に会社員の場合、病気やケガで働けなくなっても健康保険から最長1年6ヶ月にわたって収入を補ってくれる制度があります。
この仕組みをまだ確認していない方は、先にこちらをご覧ください。
▶ 傷病手当金とは?
2.働けない期間の収入はどうなるか
医療費そのものより怖いのは、実は「入ってこなくなるお金」です。
働けない期間の収入保障があるかどうかが、判断の分かれ目になります。
会社員なら有給休暇を使い、その後は傷病手当金が最長1年6ヶ月出ますが、代わりのいないフリーランスは翌日から無収入です。
治療費は払えても、家賃や住宅ローンが払えなくなるなら、民間保険を検討すべきタイミングです。
3.貯蓄でどこまで耐えられるか
あなたの貯金で、医療費を払った後も「普段通りの生活」を半年維持できるかが判断基準になります。
もし入院して10万円を払い、その後の子供の教育費や生活費に支障が出るようなら、迷わず保険を検討してください。
逆に「20万円減っても資産のごく一部」という人は、あえて保険料という固定費を抱える必要はありません。
なお、このとき前提として押さえておきたいのが、医療費の自己負担額には上限があるという点です。
自己負担の上限は、
で決まります。
「いくら必要か」を具体的に把握したうえで判断しましょう。
この5つの中で、最も重要なのは1〜3(お金の問題)です。4.5は、その後に考える補助的な判断軸と考えてください。
医療保険を考えるうえで重要なのは「医療費そのもの」よりも、その後の生活が続けられるかどうかです。
4.家族構成・扶養の有無
独身なら「最悪、実家に帰る」という選択肢が取れますが、養う家族がいるとそうはいきません。
扶養家族がいる場合、自分が働けなくなると自分だけでなく家族の生活にも直撃するからです。
自分が倒れたときに子供の習い事を辞めさせなければならない、そんな状況であれば保守的に動くのが正解です。
また専業主婦(主夫)の入院も、外食費やベビーシッター代などで意外と家計に響きます。「自分一人の体ではない」という自覚があるなら、保険は家族を守るための盾となります。
5.精神的な安心をどう考えるか
最後は感情の問題で、お金の損得だけでは割り切れないのが人間です。
「保険に入っていない」状態がストレスとなり、体調が悪くても「お金がかかるから病院に行きたくない」と躊躇するなら本末転倒です。
月数千円で「何かあっても大丈夫」という安心を買えるなら、それはメンタルヘルスにおいて必要な投資かもしれません。
「数学的な正しさ」よりも「自分の情緒の安定」を優先するのは、決して間違いではありません。
5つの基準を整理してみて、どう感じましたか。「やっぱり不要そうだ」「でも、完全に割り切れるわけでもない」
そう感じるのは、ごく自然なことです。大切なのは、その感覚をそのままにせず、一度立ち止まって整理してみることです。
| 質問 | YES | NO |
|---|---|---|
| 医療費10万円を即出せる | ⬜ | ⬜ |
| 半年無収入でも生活できる | ⬜ | ⬜ |
| 公的保障を理解している | ⬜ | ⬜ |
| 扶養家族がいない | ⬜ | ⬜ |
| 保険がなくても不安は少ない | ⬜ | ⬜ |
※ YESが多い → 不要側
※ NOが多い → 必要側
判断に迷ったら「入らない前提」で考える

もしまだ迷っているなら、一度「保険に入らない」という極論から思考をスタートさせてみてください。
まず公的医療制度を把握する
「保険が必要だ」と強調する広告の影で、意外と語られないのが公的制度の力です。まずは、お手元の保険証にある健保組合のサイトを覗いてみてください。
高い保険料と引き換えに私たちが既に手にしている「最強の防御策」が記されています。
※高額療養費制度の詳細は、上記で解説した通りです。
会社員なら収入を支える「傷病手当金」も使えますが、自営業の方は対象外なので注意が必要です。人によっては「付加給付」で自己負担が月2万円まで下がることも。
自分の武器を「算数」で理解できれば、漠然とした不安はすっと消えていくはずです。
不足分だけを民間保険で補う
公的制度という土台を確認した上で、どうしても埋まらない「特定の隙間」だけを民間保険で補う。これが、医療保険で後悔しないための基本設計です。
「全部入り」ではなく、自分に必要な保障だけを選ぶ感覚で考えてみてください。ここまで整理しても、まだスッキリしない方もいるかもしれません。
医療保険は「要・不要」ではなく「設計」で決める

医療保険は、「みんなが入っているか」ではなく、自分の家計と公的保障を基準に設計するものです。
貯蓄が十分ある人や、会社員として高額療養費制度・傷病手当金を使える人は、医療保険の優先度は下がります。
短期入院が中心と想定される場合も、過度な備えは不要でしょう。
一方で、貯蓄が少ない人や自営業・フリーランスは、医療保険が家計の防波堤になります。長期療養の可能性が高い人にとっても、保険は現実的な支えです。
医療保険は「入るか・入らないか」を迷うものではありません。公的制度で足りない部分を、いくら補うかを考えるための手段です。
ここまで読んで
「自分は、医療保険はいらない側かもしれない」
「本当に入らなくて大丈夫なのか確認しておきたい」
そう感じた方は、こちらの記事で「不要と言われる理由とその根拠」を確認してみてください。
※本記事の情報について
本記事は、厚生労働省・全国健康保険協会などの公的機関が公開している情報をもとに、一般的な考え方を解説したものです。
医療保険の必要性は、年齢・収入・家族構成・健康状態によって異なります。最終的な判断は、ご自身の状況に照らして行ってください。