
毎日、患者さんの命を支える大切な仕事をしているのに将来の自分の生活は大丈夫なのかな。夜勤や不規則な勤務をこなしながら、必死に働いているけれど老後のことを考えると不安になる。
「看護師の年金っていくらなの?」
「そもそも年金の仕組みがわかならい」
「年金は転職などで減少するって本当?」
そんな疑問を抱えながらも、忙しさに追われて調べる時間すらない。正直なところ、年金の仕組みって複雑でどうなっているのかわからない。
でも同僚の先輩看護師が最近「年金の対策、もっと早くからやっておけば良かった」と後悔していた言葉が、どうしても頭から離れない。
結論からお伝えすると、年収500万円前後で40年間しっかり働いた場合、看護師の年金の目安は月額16万〜18万円程度になります。
ただし、これはあくまで理想的なケースで転職の回数や働く病院(公立か民間か)によって、もらえる額は大きく変わってきます。
この記事では、現役看護師に実際に話を聞いてリサーチをした看護師の不安な年金事情をわかりやすくお伝えします。
働く場所による年金の違いなど、意外と知られていないポイントについても詳しく見ていきましょう。
この記事でわかること
- 看護師は年金いくらもらえるのか
- 年金の仕組みをわかりやすく解説
- 転職や出産したときに年金はどうなる
- 老後資金の不足分をカバーする方法
この記事を読んで年金事情を把握し、看護師としての経験を活かしながら充実した老後を迎える準備をしましょう。
看護師の年金の基本をおさえよう

年金の仕組みを知ることで自分がどのような形でもらえるのかを理解しましょう。
1.年金の種類と構造(1階・2階・3階建)
2.看護師はどの年金をもらえるの?
3.年金を受け取り始める年齢は何歳から?
4.年金がもらえなくなる場合とは?
1.年金の種類と構造(1階・2階・3階建)
年金は建物で表現されることが多く、1階の老齢基礎年金、2階の老齢厚生年金、3階の上乗せされる様々な年金に分かれています。
ざっくりと「国民年金」と「厚生年金」は制度の名前。「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」は受給できるいくつかの年金のうちの1つと覚えましょう。
2.看護師はどの年金をもらえるの?
看護師は働く場所によって年金の種類が変化します。ここでは勤務場所での年金の違いを説明していきますね。
| 職場 | 年金の種類 |
| 個人病院、クリニック | ・老齢基礎年金 ・老齢厚生年金 |
| 国立病院、公立病院 | ・老齢基礎年金 ・老齢厚生年金 ・退職等年金給付 |
| 大規模民間病院等 | ・老齢基礎年金 ・老齢厚生年金 ・企業年金 |
個人病院やクリニックでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受け取ります。
国立病院や公立病院では、この2つに加えて退職等年金給付も受け取れるので、受け取る年金が多くなるのが特徴です。
大規模民間病院の中には、企業年金という3階建ての部分を用意している職場もあります。
企業年金には確定拠出年金(DC)と確定給付企業年金(DB)があります。2つを併用している会社では加入を選択できます。
被保険者の種別は、下記1〜3号の種別により年金体系が異なってきます。
- 第1号被保険者: 自営業者、学生、無職の方等
- 第2号被保険者: 会社員や公務員等
- 第3号被保険者: 第2号被保険者に扶養されている配偶者。

3.年金を受け取り始める年齢は何歳から?
年金は原則65歳ですが、繰り上げとして60歳から受給が可能です。繰下げとしても受給でき、75歳から受給できます。
早く受給する方が良いと判断しがちですが、早くなると年金が減額されます。反対に遅く受給すると年金が増額されます。ここが悩むポイントになると思いますので受給タイミングはよく考えましょう。
繰上げ受給(60歳から受給)
減額率:月0.4%(60歳0ヶ月受給開始の場合、生涯24.0%減額)
繰下げ受給(75歳から受給)
増額率:月0.7%(75歳0ヶ月受給開始の場合、生涯84.0%増額)
4.年金がもらえなくなる場合とは?
国民年金や厚生年金を払っているつもりでいた。でも実は払っていなかったなど年金のもらえる時期になって発覚しても困りますよね。事前に下記の項目を必ず確認しておきましょう。
- 加入期間の不足:年金を受給するためには、一定の加入期間が必要。
- 保険料の未納:年金の権利を得るためには、保険料を一定期間納付している必要があります。
- 雇用形態の影響:派遣やアルバイトとして働く看護師は、正社員に比べて年金保険料の納付が不安定になります。
短期契約や単発の仕事が多い場合、年金の権利資格を満たさず保険料納付期間が不足するので注意が必要です。
看護師が実際にもらえる年金は?

1.個人病院勤務の看護師(40年加入)
2.公立病院勤務の看護師(40年加入)
3.平均受給額と試算例の違いを理解する
※本セクションの試算は「令和5年賃金構造基本統計調査」に基づいています。最新データについては、厚生労働省の公表資料をご参照ください。
1.個人病院勤務の看護師(40年加入)
看護師の平均年収は508万円を想定
計算根拠
- 老齢基礎年金(40年加入の満額):月額70,608円(令和8年度改定額)
- 老齢厚生年金(年収508万円、平均標準報酬額約42.3万円、40年加入):月額約92,800円
合計:約163,400円(月額)
個人病院に勤務する看護師の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てで受給されます。
※出典:「日本年金機構 令和8年4月分からの年金額等について」、「厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査」より算出
2.公立病院勤務の看護師(40年加入)
年収508万円の場合を想定します。
計算根拠
- 老齢基礎年金(40年加入の満額):月額70,608円(令和8年度改定額)
- 老齢厚生年金(年収508万円、平均標準報酬額約42.3万円、40年加入):月額約92,800円
- 退職等年金給付(有期年金20年選択時):月額約6,400円+終身年金約5,600円=月額約12,000円
合計:約183,000円程度(月額)
公立病院や国立病院に勤務する看護師の場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金に加えて「退職等年金給付」という3階建て部分が上乗せされるのが大きな特徴です。
民間病院との差は、このおよそ1万2,000円の部分です。
出典:地方公務員共済組合連合会「年金払い退職給付のしくみ」、日本年金機構データより算出
3.平均受給額と試算例の違いを理解する
「年金の平均受給額は月額14万3,973円」と耳にした人も多いでしょう。ですが、これはあくまで全業種を合わせた平均です。
全業種の厚生年金平均受給額(令和6年度)
- 全体平均:月額15万289円
- 男性平均:月額16万9,967円
- 女性平均:月額11万1,413円
看護師は女性が大多数(約95%)であり、女性の平均受給額(月額11万1,413円)が全体を押し下げる傾向にあります。
さらに、看護師特有の事情も年金額に影響してきます。
育児休業による掛金納付期間の短縮、転職による加入期間の分断、夜勤手当が基本給に含まれない場合の年金計算など、個人のキャリアパスによって実際の受給額は大きく変わってくるのです。
試算例で示した月額16万3,400円や月額18万3,000円というのは、看護師として一定期間継続勤務し、40年の加入期間を確保した場合の数字です。
実際のあなたの年金がいくらになるかは、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認してみてください。個人の状況に応じた詳しい試算が可能です。
ライフイベント時に年金はどう変わる?

1.転職の際に年金はどうなる
2.出産・産休時の保険料免除制度
3.育児休業中の保険料と養育特例
1.転職の際に年金はどうなる
転職しても年金はもらえます。転職先で厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることもできるからです。
転職するときは、転職先の会社に企業年金制度があるかどうかを確認しておくといいでしょう。企業年金があれば、そこにも加入して、さらに上乗せの年金を得られます。
企業年金は企業が独自に用意している年金制度で、年金の3階部分にあたります。公立病院や国立病院で働く場合、企業年金を掛けていれば、3階部分の退職等年金給付も同時に受け取れるという仕組みです。
2.出産・産休時の保険料免除制度

出典:日本年金機構 パンフレットを参照・加工して作成
産前産後期間の国民年金保険料免除というものがあります。出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間は国民年金保険料が免除される制度です。
多胎妊娠(2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠すること)の場合は6か月間になります。
ここでポイントなのは、免除期間が将来の年金額に影響しません。免除期間は未納ではないので納付したのと同じ扱いになっていますので安心ですね。
【新情報】2026年10月から育児免除制度が開始
2026年10月1日より、自営業やフリーランスの国民年金第1号被保険者を対象とした「育児期間に係る国民年金保険料免除制度」がスタートします。
- 実父や養父母の場合:子を養育し始めた月から、子が1歳になるまで(最大12ヶ月)免除されます。
- 実母の場合:産前産後の免除期間に続いて、子が1歳になるまでの間(最長9ヶ月)、国民年金保険料が免除されます。
病院で働く看護師には直接は関係ない制度ですが、将来的に訪問看護師として独立したり、助産院を開業したりするのを考えている方にとっては、知っておくと役に立つ情報です。
キャリアチェンジを視野に入れるなら、覚えておいて損はありません。
3.育児休業中の保険料と養育特例
育児休業を取得すると、厚生年金保険料の支払いが免除されます。
事業主が年金事務所へ申し出ることにより、被保険者(従業員本人)負担分と、事業主(会社)負担分の両方が免除されるのです。
免除期間中は保険料を全額納付したもの(納付済期間)として扱われます。免除を受けても将来の老齢厚生年金や老齢基礎年金の受給額は減らず、むしろ満額で計算されるというわけです。
育休明けに短時間勤務になった場合
育児との両立のために短時間勤務を選ぶと、給料が下がって年金の掛け金も少なくなりがちです。
将来もらえる年金が減るのではないかと心配になりますが、育休明けには給料に応じて保険料を調整してくれる制度があるので大丈夫です。
\ 育休明けに知っておきたい2つの調整制度 /
- ① 育児休業等終了時報酬月額変更届
- 復帰後3ヶ月間の平均給与に基づき、標準報酬月額を実態に合わせて引き下げます。
復帰後4ヶ月目から新しい(下がった)保険料が適用されます。 - ② 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
- 時短勤務などで給与が下がっても、将来もらえる厚生年金が減らないように保護する特例です。
ですがこの特例を申し出ると、子が3歳になるまでの間は「給与が下がる前(育休前)の高い給与水準」で保険料を納めているものとみなされます。そのため、将来の年金額は変わらないのです。
つまり、時短勤務で給料が下がっても年金額は減らない。育児と仕事の両立を支援する、とてもありがたい制度といえるでしょう。
老後の不足分をカバーする3つの方法

1.NISA(ニーサ)
2.iDeCo(イデコ)
3.個人年金保険
1.NISA(ニーサ)
NISA(少額投資非課税制度)は2024年から制度が新しくなりました。自分で商品を選定し投資するのは変わらないのですが、利益が無期限に非課税という素晴らしい制度です。
NISAはつみたて投資枠と成長投資枠の2つのパターンがあります。つみたて投資枠は年間の上限が120万円、成長投資枠の上限は240万円までになっています。
また最低投資額はつみたて投資枠、成長投資枠の両方とも100円から可能です。
詳しくNISAを知りたい方は【保存版】新NISAはやらないと損|メリット7選をわかりやすくプロが解説を参照してください。
2.iDeCo(イデコ)
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、毎月の積立で老後資金を準備できる制度です。掛金が全額所得控除になるので賢く税金を減らせます。
病院勤務の看護師であれば、毎月最大2万3000円まで積み立てることができます。運用して得た利益に税金はかかりません。
「でも投資って難しそう…」と思ってしまいますよね。私も始めたときは素人同然で全くわからないで始めました。現在も運用を続けていますが、毎月同じものを自動で購入するようにして放置しています。問題なく運用はできるので大丈夫ですよ。
詳しくはDeCoを知りたい方は【現役FP】iDeCoのしくみをわかりやすく紹介|メリット9選も解説を参照してください。
※1:2026年12月1日より、掛金上限が月額62,000円への引き上げが決定しており、この改正により、より積極的な資産形成が可能になる予定です。
3.個人年金保険
個人年金保険は決まった分だけ積み立てれば、将来がいくらもらえるか分かるというシンプルな年金保険です。
定額型と変額型という2つのタイプがあって、定額型は受け取る金額が確実に分かり、変額型は運用次第で増える可能性があります。投資は苦手という方は定額型から始めるのがいいです。
保険料控除を使えば、所得税や住民税が軽くなります。ただ、気をつけたいのは途中解約です。余裕のある月額設定にしておかないと、途中で払えなくなって損をしかねません。「ちょっと少なめかな」と思う金額で始めるのが賢明です。
大きな運用益は期待できないので、もっと資産を増やしたいという方は、NISAやiDeCoと組み合わせるのがおすすめです。
まとめ|「知る」から「備える」へ!あなたの未来を支える最初の一歩

看護師の年金は、働く場所や加入期間によって月額16万〜18万円程度になると言えます。ただ、この額だけで老後の生活がすべてカバーできるかというと、そこはライフスタイルや家族の人数によって変わってきます。
転職や出産、育児など、人生のターニングポイントでは、年金の仕組みをきちんと理解して、制度を上手に活用することが大事です。
特に育児休業中の保険料免除や養育特例のように、知らないと損をしてしまう制度もあります。
そして最も大切なのは、年金だけに頼るのではなく、NISA、iDeCo、個人年金保険など、複数の資産形成の組み合わせです。毎月の積立を工夫して、税制の優遇をうまく活用しながら、充実した老後を迎える準備をしていくといいでしょう。
自分の年金がいくらになるのかはっきり知りたい、iDeCoやNISAをどこから始めたらいいのか不安……そんな時は、専門家に一度相談してみるのも方法の一つです。
医療現場で患者さんのためにいつも頑張っているあなただからこそ、自分の人生設計にも丁寧に向き合う時間を大事にしてほしい。年金と資産形成のバランスを整えて、自分らしい豊かな老後を作っていってください。