
「フリーランスの年金が少ないって本当?」
「国民年金だけで老後は大丈夫?」
「今からでも間に合う年金対策はある?」
フリーランスになったあなたが抱える、こんな年金への不安。実は多くの人が知らないまま、将来の生活に大きな差が生まれています。
私が知って驚いたのは、フリーランスの年金受給額が会社員の約半分ということです。
会社員の平均年金受給額が月額14万円なのに対し、フリーランス(国民年金のみ)はわずか月額6万円台。この差額は老後25年間で計算すると、なんと2,000万円以上です。
でも、諦める必要はありません。正しい知識と対策があれば、フリーランスでも安心できる老後資金を築けます。
この記事では以下について解説します。
- フリーランスと会社員の年金格差
- 国民年金の仕組みと手続き方法
- 年金を増やす7つの具体的対策
読み終える時間は約8分。たった8分であなたの年金に対する不安が具体的な行動計画に変わります。
「老後破産」の言葉が現実味を帯びる今、フリーランスこそ早めの年金対策が必要です。手遅れになる前に、今すぐ行動を始めませんか?
フリーランスの年金制度を解説

フリーランスとして働き始めると、これまでの年金制度とは違った対応が必要です。
会社員のときに入っていた厚生年金には入れなくなり、自分で「国民年金」に加入して保険料を払う必要があります。
ここではフリーランスの年金の基本について、わかりやすく説明していきます。
フリーランスが加入する「国民年金」はどんなもの?

国民年金は、20歳から60歳までのすべての人が加入する公的な年金制度です。
フリーランスの場合は「第1号被保険者」になり、毎月の保険料を自分で納めます。
2025年度(令和7年)の納める保険料は月額17,510円です。
40年間しっかり払うと65歳から年間で83万1,700円(月6万9,308円)の年金がもらえます。この金額は令和7年に65歳の年齢でもらうとした場合の年金額です。現在20歳、30歳など若い世代の場合は実際に65歳のときに、いくらもらえるかは正直わかりません。ですがおおよその金額を知っておくと将来の計画が立てやすくなります。
出典:日本年金機構、日本年金機構リーフレット
年間で83万1,700円(月6万9,308円)の金額を知って少ないと思った方が大多数だと思います。私も年金を知ったときに愕然としました。実際にフリーランスや個人事業主の方達は年金に不安がないのかを調べました。
下記に国民年金についてフリーランス・個人事業主のアンケート結果があります。
国民年金制度について、約半数の人が不安を抱いていることが明らかになりました。
さらに「不安を感じる、やや不安を感じる方」に理由を聞くと将来支給される年金額では足りないという回答が75.6%ありました。やはり多くの人が不安に感じているのがわかりますね。
出典:GMOクリエイターズネットワーク株式会社 プレスリリース
フリーランスは厚生年金に入れないの?
基本的にフリーランスや自営業の人は、会社員や公務員のように厚生年金には入れません。
厚生年金は「会社で働いている人」が対象で、会社と本人が半分ずつ保険料を負担する仕組みになっています。でも、まったく方法がないわけではありません。
たとえば自分で会社を作って役員になり、給料をもらう形にすれば厚生年金に加入できます。
制度を使わずにフリーランスのまま働くなら、将来のために「国民年金基金」や「iDeCo(イデコ)」、「NISA(ニーサ)」などを活用するのがおすすめです。
iDeCoは自分で上乗せして積み立てる仕組みなので、老後に受け取れる年金を少しでも増やしたい人に向いています。
フリーランスの年金は少ない?

会社員からフリーランスになると、年金がガクッと少なくなってしまいます。
「実際にいくらもらえるの?」「毎月の支払いはいくら?」といった疑問について、順番に詳しく見ていきましょう。
老後にもらえる実際の年金額
国民年金を40年間きちんと払い続けたとして、65歳からもらえるのは年間83万1,696円。
1ヶ月だと月6万9,308円くらいです。正直、これだけで暮らしていけるかと言われると厳しいですよね。
会社員の厚生年金は給料が高い人ほど将来もらえる額も増えますが、国民年金は誰でも同じ。
年収1,000万円稼いでいても、月6万8,000円は変わりません。
老後2,000万円問題の言葉もあり、国民年金だけだと本当に心配になってきます。
国民年金の毎月の保険料(支払額)
2025年度の国民年金保険料は月1万7,510円。毎月自分で払わないといけません。会社員時代は給料から勝手に引かれていたので楽でしたが、フリーランスは全部自己管理です。
支払い方法は口座振替、クレジットカード、コンビニ払いから選べます。口座振替にすると少し安くなるので、節約したい人は検討してみてください。
月1万7,510円って結構な出費です。納付忘れは未納扱いとなり、将来の受給資格に影響(10年以上の納付が必要)するので注意が必要です。
学生なら支払い猶予ができる?納付特例制度を解説

大学生や専門学校生でお金がない場合は「学生納付特例制度」が使え、申請すると在学中は保険料が免除になります。
卒業して働き始めてから後払いできますが、後から払い忘れると将来の年金が減ります。
手続きは市役所や区役所で行い、学生証と収入がわかる書類を持っていけば大丈夫です。
「お金ないから払わない」で放置するより、ちゃんと手続きしておいたほうが絶対に安心ですよ。
保険料免除制度で負担を減らす方法
フリーランスに成り立てで収入が少ない人は、国民年金保険料の免除制度を使いましょう。
全額免除から1/4免除まで4つのコースがあり、前年の収入に応じて決まります。免除してもらった期間も年金額の計算に入るので、払わずに放置するよりずっとお得です。
お金がきついときは我慢せず、まずは役所で相談してみてください。意外と親身になって教えてくれますよ。
下記表は4つのコースの保険料の免除金額(月額)です。前年の所得になるため、一定の収入があると免除はできません。

フリーランスと会社員の年金の受取り金額を比較

フリーランスと会社員では、将来もらえる年金額にかなりの差があります。実際の数字を使って、どのくらい違うのか見てみましょう。
フリーランスの年金シミュレーション
フリーランスがもらえるのは国民年金だけなので、正直言って金額は少なめです。2025年度の国民年金は満額で月6万9,308円です。
ただし、この満額をもらうには20歳から60歳まで40年間払い続ける必要があります。払えない時期があると未納分は年金の受け取り金額が減ります。
たとえば35年しか払わなかった場合は月6万645円、30年なら月5万1,981円です。月6万円では一人暮らしでもかなり厳しいですよね。よって国民年金だけで老後を過ごすのは、非常に厳しいのが実情です。
納付年数 | 納付月数 | 年金(年額) | 月額 |
40年(満額) | 480ヶ月 | 83万1,700円 | 6万9308円 |
35年 | 420ヶ月 | 72万7738円 | 6万645円 |
30年 | 360ヶ月 | 62万3775円 | 5万1981円 |
フリーランスの年金は何歳で元を取れるの?
結論は65歳から受給して74歳頃で元が取れます。平均寿命を考えると、男女ともに可能性はあります。
計算結果
納付期間:40年間(20〜60歳)
納付回数:480月(40年×12ヶ月)
1ヶ月の保険料:1万6,980円(2025年度)
納付してきた合計額:16,980円×480ヶ月=815万400円
815万400円(納付額)÷83万1,700円(受給できる年額)=約9.8年
65歳+約9.8年=74歳頃
最新ベースの計算だと65歳に受給開始して74歳頃で元が取れます。
受給開始年齢は65歳 平均寿命までの受取額(男性81歳、女性87歳)
男性(16年間受給) 約1,330万円(83万1,700円×16年)
女性(22年間受給) 約1,829万円(83万1,700円×22年)
会社員の年金シミュレーション
会社員なら国民年金プラス厚生年金がもらえるので、フリーランスよりずっと多くなります。平均月額35万円と仮定すると40年働いた場合、月約14万円です。
内訳は国民年金部分が約6.9万円、厚生年金部分が約7.2万円です。実際の平均額を見ると男性で月16万6,606円、女性で月10万7,200円となっています。(出典:厚生労働省 令和5年度最新)
もちろん給料や働いた年数で変わりますが、月約14万円はもらえます。
計算結果
条件
国民年金加入期間 20歳から60歳まで40年間(満額)
厚生年金加入期間 22歳から60歳まで38年間
具体計算:
平均標準報酬月額:35万円
加入月数:38年×12 = 456ヶ月
厚生年金額 ≒ 350,000 × 5.481 ÷ 1000 × 456 ≒ 87万5,861円
→ 老齢厚生年 月額:7万2,988円
老齢基礎年金(満額):年額83万1,700円(月額6万9,308円)
老齢厚生年金:年額87万5,861円(月額7万2,988円)
合計 年額170万7,561円(月額14万2,296円)
よって会社員の受給できる金額は月額14万2988円です。
ここで老齢基礎年金、老齢厚生年金の言葉が出てきましたので、混同しやすい国民年金と厚生年金も比較して解説していきます。
国民年金は加入する制度の名前で、老齢基礎年金は複数ある年金の中の1つの名称です。
支払うときは国民年金の名称で、年金を受給するときは老齢基礎年金の名前に変化すると覚えてください。
老齢厚生年金も同じく、厚生年金は支払うときの名称で、年金を受給するときは老齢厚生年金になります。
年金はよく3階建てで表現され、1階が国民年金(老齢基礎年金)、2階は厚生年金(老齢厚生年金)、3階は企業年金やiDeCo(イデコ)が該当します。
2つの年金額の違いは
フリーランスは年金月額7万円、会社員は月額14万円で年間84万円の差が出てしまいます。老後を20年とすると、なんと1,680万円も違ってくるんです。
この差が生まれる理由は簡単で、会社員は厚生年金にも入っているからです。しかも保険料は会社が半分負担してくれます。
一方フリーランスは国民年金のみで、全額自己負担です。さらに会社員には退職金もあることが多いので、老後資金の差はもっと広がります。でも諦める必要はありません。
フリーランスでも国民年金基金やiDeCo、NISAを使えば、この差を縮めるのは十分可能です。興味がある人は下記記事を見ると制度の概要が簡単にわかると思いますよ。
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フリーランスの年金切替と支払い方法

会社員からフリーランスになったら、年金の切り替え手続きをしないといけません。手続きの流れから、お得な支払い方法まで説明します。
変更手続きはどうやるの?
退職してから14日以内に、お住まいの市役所や区役所で手続きしてください。この期限は法律で決まっているので、忘れずに行きましょう。
必要な書類
- 退職日がわかる書類(離職票など)
- 年金手帳か基礎年金番号通知書
- 免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書
上記3つの書類を持って行けば問題ありません。
会社の方で厚生年金をやめる手続きはしてくれるので、あなたは国民年金に入る手続きだけすれば大丈夫。
窓口での手続きは30分くらいで終わるので、退職が決まったら早めに済ませておくと安心ですね。
国民年金はまとめて払うとお得!実際の費用は?
月々の保険料は17,510円(2025年度)ですが、まとめて払うと安くなります。これを前納といって、けっこうお得です。
6ヶ月分をまとめて払うと、口座振替なら1,190円、現金で払っても850円安くなります。1年分だともっと割引額が大きくなって、2年分が一番お得です。
ただし一気に大きなお金が出ていくので、手持ち資金と相談して決めてくださいね。口座振替と比較すると割引が大きいので、口座振替はおすすめです。
手続きをしないとどうなる?
手続きしなくても年金事務所から案内が来た場合は、放置しないでください。払わない期間が続くと、将来もらえる年金が減ってしまいます。
14日過ぎても手続きはできますが、その間は年金に入っていない状態です。もし事故や病気で体に障害が残ったとき、障害年金がもらえなくなる可能性があります。
未納期間があると老後の年金も少なくなってしまいます。「そのうち案内が来るから大丈夫でしょ」と思わずに、退職したらすぐに手続きしたくださいね。
フリーランスが知りたい厚生年金の代わりの年金7選

国民年金だけじゃ老後が不安なフリーランス向けに、厚生年金の代わりになる制度を6つ紹介します。
1. 国民年金基金
国民年金基金は、フリーランスが厚生年金の代わりに使える一番おすすめの制度です。
月最大6万8,000円まで掛けることができ、1口目は終身年金、2口目以降は7種類(A型、B型、I型からV型)選んで組み合わせできます。
1口目は必ず終身年金から
A型かB型のどちらかを選びます。
2口目からは自由に組み合わせ
- I型〜IV型:10年間や15年間といった決められた期間だけ受け取る有期年金
- V型:最低5年間は必ず受け取れる確定年金
老後の生活設計や家族の状況に応じて、最適な組み合わせを選択できます。
払った掛金は全額が所得控除になり、受給巣るときも税金面で優遇されるのでかなりお得です。将来もらえる年金額は受給するときに決まるので「いくらもらえるかわからない」という心配がありません。
もし早く亡くなっても遺族にお金が入るので、掛け捨てにもなりません。途中でやめることができないので、無理のない金額で始めるのが大事です。
2.付加年金
付加年金は月たった400円で将来の年金を増やせる、めちゃくちゃお得な制度です。もらえる金額は「200円×払った月数」で計算されて、40年間払うと年9万6,000円プラスでもらえます。
40年間で払う総額は19万2,000円なので、年金をもらい始めて2年で元が取れます。こんなに確実で利回りの良い制度は他にありません。手続きも簡単で、国民年金の窓口で「付加年金をやりたいです」と言うだけです。
ただし国民年金基金に入っていると付加年金は使えないので注意してください。まずは付加年金から始めて、お金に余裕が出てきたら国民年金基金を考えるのが良いでしょう。
3.NISA
NISAは投資の利益に税金がかからない制度で、フリーランスでも使っている人が多いです。2024年から年間360万円まで非課税で投資できるようになり、運用益や配当金に税金がかからないのでかなりお得です。
老後資金の準備にも使えて、投資初心者でも始めやすいです。
NISAで買った資産はいつでも売れるし、iDeCoみたいに「60歳まで引き出せない」ってこともないから使い勝手が良いです。
投資なので損することもあるし、銀行や証券会社によって扱ってる商品や手数料が全然違います。口座を作る前にちゃんと調べてくださいね。
税金の優遇を受けながらお金を増やしたいなら、NISAはすごく効率がいい制度だと思います。最初は「つみたて投資枠」から始めて、慣れたら「成長投資枠」も使ってみてください。
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4.iDeCo
iDeCoは自分でお金を運用して年金を作る制度で、フリーランスなら月6万8,000円まで積み立てできます。国民年金基金や付加年金と一緒に使う場合は、その分を引いた金額が上限になります。
一番の魅力は税金が3回お得になることです。積み立てる時は所得控除、運用中は税金なし、需給のときも優遇されます。
年収400万円なら約20%の節税効果があるので、実際の負担はかなり軽くなります。ただし運用なので将来いくらもらえるかはわからないし、60歳まで引き出せません。それでも税金面のメリットを考えると、フリーランスには本当におすすめの制度です。
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掛金は全額が所得控除の対象で、年収400万円なら年間約20%の節税効果です。お金に困ったときは、掛金の範囲内で安い金利でお金を借りることもできます。
受給するときは、退職金扱いになるので税金面でも有利です。ただし20年未満でやめると損するので、長く続ける前提で入りましょう。事業が軌道に乗っているフリーランスなら、老後資金と節税を同時にできる良い制度です。
6.個人年金保険
個人年金保険は保険会社がやっている年金で、確実に年金をもらいたい人向けです。定額タイプなら将来もらえる金額が決まっていて、変額タイプなら運用の結果で金額が変わります。
個人年金保険料控除で年最大4万円の所得控除があり、年収400万円なら年8,000円くらいの節税になります。
ただし途中でやめると損することが多く、物価が上がったときに対応できないのが弱点です。確実性を重視するなら選択肢の一つで、他の制度と比べると税金面のメリットは少なめです。まずは国民年金基金やiDeCo、NISAを検討してから考えるほうが良いでしょう。
7.終身保険
終身保険は一生涯保障が続く生命保険で、お金も貯まっていきます。保険料を払い終わった後は解約返戻金がだんだん増えていき、老後資金として使用可能です。
生命保険料控除で年最大4万円の所得控除があり、年収400万円なら年8,000円くらいの節税効果があります。契約者貸付の仕組みを使えば、解約しなくてもお金を借りられます。
万が一の保障と老後資金の準備が同時にできるのが良いところです。ただし保険料が高くて、早くやめると大損します。
今は金利が低いので増え方もあまり期待できません。保険機能として考えるなら良いのですが、純粋に老後資金を増やすのを考えるなら他の制度のほうが効率的です。