
「病気で動けなくなっても、傷病手当金があるから大丈夫」
「給料の3分の2も出るなら、生活はなんとか回せるはず」
「自分の場合、実際にいくらもらえるんだろう」
こんな疑問を持っていませんか。
傷病手当金は強力な制度です。ただ「いつもの給料と同じ額が入ってくる」と思ったまま休職してしまうと、数ヶ月後に想定外の家計ショックを受けてしまいます。
FP2級の勉強をしていたとき、この制度の「手取りの落とし穴」を知って正直驚きました。知っているかどうかで、備えの厚さがまったく変わってきます。
この記事では、正確な計算方法・年収別の手取り額・休職中の家計に潜む「見えない赤字」を数字で解説します。
読み終えると、自分の本当の受取額と毎月の不足分が具体的に見えてきます。

傷病手当金はいくらもらえる?基本の計算方法

受け取れる金額を一言でいうと「休む前の給与の約3分の2」です。1日あたりの支給額は次の計算式で決まります。
1日あたりの支給額=支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3
ここで押さえておきたいのは、直近の給料ではなく「標準報酬月額」という基準を使う点です。基本給だけでなく、残業代・役職手当・通勤手当も含まれます。
遠方通勤で交通費が高い方や、残業が多かった方は、基本給だけで計算するより支給額が多くなります。
自分の基準額を確かめたいときは、給与明細か「標準報酬月額決定通知書」を見てみてください。
「3分の2もらえる」のに、なぜ生活が苦しくなるのか

月収30万円なら、計算上は月約20万円が支給されます。20万円あれば暮らせると感じる方も多いと思います。ところが、手元に残るのはそれより少ない金額です。
傷病手当金は非課税なので所得税はかかりません。ただし、健康保険・厚生年金の社会保険料と住民税は、休んでいる間も止まりません。
育児休業のような保険料免除の仕組みがなく、会社が立て替えて後から請求が来るパターンが一般的です。
結果として、実際に手元に残るのは現役時代の収入の約6割というケースがほとんどです。
年収別シミュレーション:毎月いくら足りなくなるか
自分の年収で、毎月どれだけ赤字になるかを確認してみてください。
※標準報酬月額を年収の1/12として計算し、社会保険料等の負担を考慮した概算です。
| 年収 | 推定月収(額面) | 傷病手当金(月額目安) | 毎月の不足額 |
| 300万円 | 約25万円 | 約17万円 | ▲ 8万円 |
| 500万円 | 約41万円 | 約27万円 | ▲14万円 |
| 700万円 | 約58万円 | 約38万円 | ▲20万円 |
年収300万円(毎月約8万円の赤字)
もともとの貯蓄余力が小さいケースが多く、月8万円のマイナスは半年も経たないうちに貯金を食いつぶしてしまいます。
年収500万円(毎月約14万円の赤字)
住宅ローンや子育て費用がちょうどピークという方も多い年収帯です。ボーナスのない状態で月14万円を毎月補填し続けるのは、じわじわと家計を追い詰めます。
年収700万円(毎月約20万円の赤字)
手当金38万円は数字だけ見ると多く感じますが、収入とのギャップは3つの年収帯で最大です。家賃が高い、子どもが私立、という世帯ではとくに資金繰りが苦しくなります。
高年収ほど要注意な理由

「年収が高い分、手当も大きいから自分は問題ない」と考えていませんか。実はこれが一番危ない思い込みです。
年収が高い世帯ほど、家賃・住宅ローン・教育費といった固定費も積み上がっています。病気になったからといって、すぐに下げられるものではありません。そこへ入院費や通院のタクシー代といった新たな出費まで加わります。
傷病手当金は「ある程度の生活を維持するための制度」であって、休職前と同じ生活をそのまま続けるための制度ではありません。この前提を頭に入れておくかどうかで、事前の備えの厚さが変わってきます。
まとめ:まず自分の「赤字額」を計算してみましょう

傷病手当金は頼りになる制度ですが、手取りは現役時代の約6割になり、固定費が高いほど毎月の赤字も大きくなります。
「制度があるから安心」で止まらず、今の月の支出から傷病手当金の受取額を引いた差額を、一度計算してみてください。その数字が、貯蓄や保険で埋めるべき「本当の不足分」です。
傷病手当金の「金額」だけでなく、
- いつまで支給されるのか
- 条件を満たしているのか
- 本当に生活できるのか
まで含めて全体像を整理したい方は、以下の記事をご覧ください。
▶︎傷病手当金とは?条件・期間・金額の全体像をわかりやすく解説
また、個別に詳しく確認したい方はこちらをご覧ください。
▶︎傷病手当金はいつまで?支給期間の通算ルールと注意点を徹底解説
▶︎傷病手当金の条件とは?もらえる人の基準をわかりやすく解説
▶︎傷病手当金だけで生活できる?主婦家庭の不足額と判断基準を見る